vol.92 ありがた苦手の告白
「WE!」2012年2月号掲載
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今回はありがた苦手なモノの話。
ありがた苦手とは、本来は喜ばしい事なのに「でもなんかちょっと苦手なんだよな〜」と心の奥底で感じてしまい、ありがたさの満額を受け取れずにとまどってしまう独特な感情の事です。
オイラの場合、真っ先に思い浮かぶのが【女子が張り切って作ってくれたお弁当】。
パカッと開けた時にやたらカラフルだったり、ニンジンが花の形に切ってあったり、盛りつけが美麗すぎていたり、品数がやたら豊富で「これは5時に起きたな」と思えるような弁当だと、途端に気分が萎縮してしまい味がまったくわからなくなってしまうのです。
もちろん自分の為に愛情を込めてわざわざ作ってくれた弁当ですから、嬉しい事は嬉しいのですが、心のどこかで「自分みたいなモンのためにここまで!心がくすぐったくて食欲どころじゃない!」とか思ってしまうのです。
オイラの場合、女子の手料理に対しては「米の炊き方が絶妙!」だとか「このダイコンのシャキシャキ感はどうやって?」といったポイントに評価の置き所があるので、こういった女子力全開の弁当だと「褒めどころがベタすぎて口に出しづらいな〜。予定調和な事しか思いつかん!」と、己が工夫の無いつまらない人間のようにも思えてしまうのです。あと、こういった弁当の時はなんだかいつもよりゆっくり食わなくてはいけない強迫観念にもかられて、ますますもって味がわからなくなる感じも苦手に拍車をかけます。
そしてもうひとつありがた苦手なモノ、それは【誕生日を人に祝ってもらう瞬間】です。
仕事で行った現場のスタッフなんかが「なんと今日はピエール瀧さんの◯◯歳のお誕生で〜す!ヒョ〜〜ッ!」なんつって、扉の向こうからケーキなんかが運ばれて来るともう地獄です。
みんながこっちを向いて、笑顔で手をパチパチと叩いている景色が視界に入ったりすると、なんだかさらし者になったようで逃げ出したい気分になる時もあります。
もちろんこの場合も、気を利かせてくれたスタッフがよかれと思ってやってくれている事は重々理解しているのですが、やはり「自分みたいなモンのためにわざわざ…。とても申し訳ない」と、一応はにこやかに笑っている眼の奥がどんどんシラフになっていってしまうのです。
ですから、たまに自分の誕生日会を催している人なんかに遭遇すると信じられない気分にもなります。この人はなんてハートが強いんだと。いやホントに。
こういったありがた苦手な感覚でケアすべき最大のポイントは、その思いを相手に悟られてはいけないというマナーです。そのマナーを完遂するために、変な汗をかいたり、やたら饒舌になってしまう事が多いオイラ。そのギクシャクした立ち振る舞いを後で思い出して自分で評価する時、言いようのない小っ恥ずかしさと滑稽さにさいなまれて、自部屋で軽くうなだれたりしている事が多いです。